松﨑友哉

トリ抜け

Past
2020年1月11日(土)- 2月8日(土)
11:00 - 19:00

オープニング・レセプション:1月11日(土)18:00 - 20:00

Yutaka Kikutake Galleryでは1月11日(土)から2月8日(土)まで、松﨑友哉による東京では初めての開催となる個展「トリ抜け」を開催します。

 

松﨑の絵画作品は、自身によって形作られた厚みをもった石膏に描かれます。「空間にひそむリズムやその状態を視覚的に表す」ことに興味があるという松﨑の作品は、意識的・無意識的な筆跡や即興的な動作を重ねることで制作されますが、空間のリズムは留まることがないという作品が志向することとは相反する事実によって、作品が矛盾するふたつの世界を共存させるような場となるのです。

絵画はある奥行きをもった世界であり、絵画空間と呼べるものは確かに存在していますが、一方では、それは石膏と絵の具からなる物質的な塊であるとも言えます。いびつな形状の石膏を支持体に選び、さらにそこに穴を穿つことによって、空間と物質というともに多次元的な要素を操作しながら、いかにして両者のハーモニーを導き、絵画を生み出すことができるのか? それは松﨑の試みの核心であると言えるでしょう。

 

本展のタイトルである「トリ抜け」は石膏に開けられた穴に松﨑が与えた呼び名です。それは例えばバーネット・ニューマン*が自身の絵画に配した縦に伸びた線をZip (ファスナーやチャックとともに郵便番号の意味もある)と名付けたように、自身の試みに呼び名をつけることで、作品世界に異質な物語を導入しようとした意図が垣間見られます。

松﨑が名付けたトリ抜けという言葉には、‘通り抜け'、あるいは‘飛び抜け'に近い響きがある一方で、住処の出入り口となる丸い穴を持つ鳥の巣箱、またはトリという判然としない何かが抜ける穴を連想させるなど、それは様々な詩的な解釈に開かれた絵画の出入り口のようでもあり、その向こう側には未知の空間(絵画の本質)を想像することもできるようです。

 

 

*バーネット・ニューマン(1905年〜1970年)

 

抽象表現主義を代表するアメリカの画家。巨大で平面的な色面のキャンバスに垂直線を配す独自のスタイルで知られる。

 

 

松﨑友哉は、1977年福岡県生まれ。1997年に渡英し、2002年セントラル・セント・マーチンズ・カレッジオブアートアンドデザイン学士課程修了、2004年チェルシー・カレッジオブアートアンドデザイン修士課程修了。現在はロンドンを拠点に活動している。

2018年、ピーター・ブレイク、デヴィッド・ホックニー、ピーター・ドイグなども受賞したイギリスで60年続く絵画公募展「ジョン・ムーアズ・ペインティングプライズ(John Moores Painting Prize)」に入選。自身の作品制作のほか、アーティストの視点で展覧会のセルフ・キュレーションやプロジェクトスペースの立ち上げに携わるなど活動は多岐にわたる。

近年の主な展覧会に「Crossing」(Hagiwara Projects/2019)、「A creak in the stair」(SIXSECOND/2018)、「Odd Metre」(White Conduit Projects/2017)がある。

 

 

松﨑友哉は1997年に渡英して以来、ロンドンを中心に活躍しています。これまで、自身の作品制作の他に、作家の視点でキュレーションをするということに重点を置き、作品制作の課程に着目した展覧会を行ってきました。

2010年「White Deer」では、自身が当時住んでいた小さなアパートに壁を立て、作品の展示を行いました。

 

2010 White Deer 0
2010 White Deer 1

「White Deer」展示風景

2011年には「Makura」を開催。展示会場はお店の看板を描くという交換条件で借りた服飾卸屋の倉庫でした。Makuraというタイトルは落語の「まくら」から着想を得たもので、本題に入る前に、会場の雰囲気を解きほぐしたり、本題に関係のある話をしたり、自然に話の世界に引き込む、落語の「まくら」とよばれる行為を作家の制作過程になぞらえています。

2012年にはベルリンのプロジェクトスペースにて『The Chameleon’s Eye』を実施。作家のスタジオを訪ね、会話をし、作品の制作過程を重視してロンドンとベルリンの作家を選出。会期中には参加作家Angus Millによるスライドトークと、Mill氏が通うアラスカで食べられているパンの試食なども行いました。

2013年にはそれまでの活動が認められ、トーキョーワンダーサイトへリサーチのため2ヶ月滞在しています。

 

 

展覧会紹介シリーズ「B面」疾駆Blog_トリ抜け

魔法の絵筆 アーティストへの10の質問 01 松﨑友哉

 

Tomoya Matsuzaki "Untitled (TORINUKE)", 2019
Brunswick Park, London

Tomoya Matsuzaki "Untitled", 2019
49.5 x 53 cm
Oil and Charcoal on Plaster Slab