新里明士

translucent transformation

Past
6月4日(土) - 7月2日(土)
12:00-19:00 日・月・祝 定休

“translucent transformation”

 

Yutaka Kikutake Galleryでは6月4日(土)- 7月2日(土)まで、新里明士によるギャラリーでの2回目の個展「translucent transformation」を開催します。
 
今回の展覧会では、新里明士の代表的なシリーズ「光器(こうき)」の大作を発表予定です。
「光器」は、透光性の高い白磁に穴をあけ、穴に透明の釉薬を埋め込んで焼成した作品です。受けた光を磁器に内包させながら、同時に作品自体が光を放つかのような印象をあたえる同作は、轆轤(ろくろ)で成形したあとに、乾ききらないうちに全ての穴をあける必要があるため、その作業時間は丸半日以上続けられることがあるといいます。
 
より光を纏うように薄く成形された器胎は焼成の過程で耐え切れずにヒビや割れ、小さなキズを生じさせることがあります。そのため、「光器」は制作工程において極めて精度の高い技術が必要となりますが、近年は「失敗」によって生じるキズの造形に力強さを見出し、キズを起点に新たな造形を試みる作品も発表しました。作家が20年近く作り続けてきた「光器」シリーズは、構造上の問題を乗りこえながら表現の模索を重ねていくことで、あらゆる造形をより積極的に創作するに至りました。
 
作家はこれまで、酒器や椀、香炉として造形するだけでなく、制作するなかで「磁器」と「光」の関係や、「使えるもの」と「使えないもの」の関係を追求してきましたが、このような試みを続けることで近年では色や形に焦点をあてた様々な形態の作品も発表しています。
コバルトや金属を混ぜることによって発色する鮮やかな青色は、作家の作品シリーズ「穿器(せんき)」にみられますが、「光器」とは様相が違っています。際立つ色の印象に加えて、穴には釉薬を埋めないことで内側と外側の境目を無くし、より軽やかに、柔軟な発想による造形を求め尽くされた作品の姿は、極めてユニークなものへと導かれます。陶芸にまつわる歴史の継承に留まらず、作家自らが確立した技法による素材へのアプローチから、器という定義を越え出ていく作家の姿勢を垣間みることができます。

新里は2000年代初頭より多数の国際展への参加に加えて、2011年には1年間アメリカへ滞在するなど、日本だけではなく海外でも現代陶芸界におけるキャリアを重ねてきました。制作を通して着実に技術を高めつつ、表現や思考を繰り返してきた新里による本展覧会では、焼き物の形を継承しながらもより自由に創作された作品を展示いたします。

 

 

アーティストについて

 

新里明士は1977年千葉県生まれ。2001年多治見市陶磁器意匠研究所終了。主な受賞歴に2005年イタリア ファエンツァ国際陶芸展 新人賞,2008年パラミタ陶芸大賞展 大賞,国際陶磁器展美濃 審査員特別賞,2009年菊池ビエンナーレ 奨励賞,2014年MOA岡田茂吉賞 新人賞,  2020年度 日本陶磁協会賞受賞。国内の他,アメリカ,イタリア,ルーマニアなど海外でも多くの展覧会に出展し,高い評価を得ています。