新里明士

曲/面

Past
2023年11月25日(土) – 12月26日(火)
12:00 - 19:00 日・月・祝 定休

Yutaka Kikutake Galleryでは11月25日(土)- 12月26日(火)まで、新里明士によるギャラリーでの第三回目となる個展を開催します。洗練された技術と素材のコントロールが特徴的な新里の作品は、アメリカ、イタリア、ルーマニアなど海外の多くの展覧会にも出展され、高い評価を得ています。「曲 / 面」と題された本展では、新里の代表的シリーズ「光器」の延長線上に展開された新作群の配置によって、光、色、および形態が相互に呼応し合う包括的な空間表現に取り組みます。

本展を構成する作品群は、「器」という概念から解き放たれた自由なフォルムが印象的です。天井からはサークル型の平面作品が数点、吊り下がっているのが見えます。白い素地に穿たれた穴が光を取り込み、空間に浮遊感を与えているようです。展示空間の真ん中には台が置かれ、本展のメインとなる数点の白磁と、様々な色合いのボール状のオブジェが、差し色のような効果をもたらしながら、コンポジションを形成しています。本展制作において、器にとって不可欠な「高台」から自由になることを意識した、と新里はいいます。容器の底に設ける支えである高台は、鑑賞作法においても、あるいは器を卓上に置く際の実用的な観点においても重要なパーツです。本展制作において作家は、それらをひっくり返し、さかさまにした状態で焼成するという手法を取りました。高台がなく、重力に従って垂れ下がり焼成されたフォルムには、ものをいれる容器という先入観からいかに遠く離れることが出来るか、という作家の思考形態が示されているようです。本展を構成する作品に、器という言葉は使われず、英語の「Luminescence」が使用されていることにも、彼の問題意識が現れているといえるでしょう。

「磁器」と「光」、あるいは「象徴的な器」と「実用的な器」の関係性を追求してきた新里は、工芸とより自由な形態の探索との間を行き来しつつ、その実践に深みを与えてきました。繊細な素材の焼成過程につきもののやぶれや、傷をあえて取り入れる試みもまたそのひとつです。手作業であけられた小さな穴の並びの細やかな印象とともに、欠けややぶれが生み出すダイナミックな動きは、彼の作品に独特の魅力を付与しています。「光器」シリーズが明かした洗練と不完全さのバランスは、本展において、細部にフォーカスを集める工芸的な視点から飛翔し、鑑賞者により広がりを感じさせる空間構成へと発展を遂げています。新里の生み出す斬新なコンポジションは、伝統的な陶磁の世界を原点としつつ、より自由で型にはまらない表現の可能性を追求する、二つの視座の対極性によってもたらされています。素材と技法の探求を深め、実践を重ね続ける新里明士の新境地をぜひご高覧ください。