Mari Katayama

tree of life

Upcoming
Roppongi
March 19 (Thu) - May 16 (Sat), 2026
12:00 - 19:00 Closed on Sun, Mon and National Holidays

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精巧に手縫いされた布のオブジェを起点に、自身の身体性を中心的なモチーフに据え、写真、映像、アートプロジェクトなど多領域わたる作品制作を続ける片山真理(1987年埼玉県に生まれ、群馬県に育つ。現在は群馬県を拠点に活動)。片山の作品は自伝的でありながら普遍的な共感を呼び起こし、社会が個人に課す「役割」や「かたち」が、私とあなたの境界線、そして“正しさ”をどのように形づくるのかを問いかけます。2025年には、英国のヴィクトリア&アルバート博物館のためのコミッションワーク(V&A Parasol Foundation Women in Photography projectの支援による)を実現。Yutaka Kikutake Galleryの六本木新スペース開設後のこけら落としとなる本展は、「tree of life」と題されたV&A博物館の新収蔵作品を含む片山の新作群を日本で初めて発表する機会となります。


本作「tree of life」は、片山が構築した鏡張りの空間で、彼女自身が被写体となった、十点に及ぶ写真作品です。手縫いのオブジェに囲まれ、鏡面に反射する彼女の輪郭は曖昧さが際立ち、それが鏡像であるのか、実像であるのかもはっきりしません。天と地、現実と虚像、内と外、自己と他者 - 鏡の生み出す反射が、全ての輪郭を曖昧にし、まるで増殖するイメージの生成が無限に繰り返されていくようです。キャリアの初期の頃より方山が抱き続けるデジタルイメージの可塑性や、複製性、終わりのない更新性への意識を深く反映する本作は、彼女がたびたび語る「所有されない身体」への接続の希求とも繋がっています。複数の四肢を持つ自身最大のオブジェ ― 全長20メートルにおよぶ - と共に行われたポートレート撮影は、全て片山自身の手によってシャッターが切られ、そこでは「撮る/撮られる」という関係性に根差した権力構造の様相もまた意識されています。片山が彼女自身の身体を「公共性」と共に語るのは、それが常に他者の視線や制度、社会的文脈によって方向づけられる存在であるからにほかならず、それは彼女の作品が担う「公共性」とも無関係ではありません。撮影され、客体化された自身の姿は、自分自身からさえも切り離され、社会的・身体的・感情的な現実が交差する場となって立ち現れます。無限の鏡の反射の中に浮かび上がる彼女の身体は、自己と他者の境界を問い、また同時に、循環・更新する所有者のいない身体として、その公共性を引き受けています。


一方、現在でも中判のフィルムカメラを使用し、多重露光もPhotoshopも使わずに、一度のシャッターで時間をキャプチャするという片山の手法は、針と糸で縫うことも含め、身体的かつ物理的な領域に深く根ざしているとも言え、本作「tree of life」で構築された鏡の空間での実践は、デジタルイメージが有する虚構性に対する距離感の取り扱いと共に、それらを身体と空間のレベルで現実化する試みでもあります。


「私」の身体は、一体誰のものなのか - 増殖する鏡の反射によってものごとの曖昧な境界線を示しつつ、役割やレッテル、様々なラベルを背負いながら今ここを生きることへと投じられた片山の眼差しは、そのまま画面に正対する鑑賞者それぞれにも向けられています。彼女の姿は、社会や世界、私とあなたの関係性、様々な顔や役割を持つ「私」と世界との連なりを深く問い続けています。しかし、無限の反射の中で歪み、攪乱された彼女の姿はまた、変容の象徴でもあります。画面に現れる像は、木の根っこや、枝になり、流れる川は血管にも似て、そして、それらは全て力強い生命力に満ち溢れているのです。

5年におよぶ構想の末に完成した片山真理の新作「tree of life」の試みをぜひご高覧ください。

tree of life #04, 2025
Commissioned by the V&A Parasol Foundation Women in Photography project with support from the Parasol
Foundation Trust.