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六本木
2025年9月13日(土) – 10月18日(土)
12:00 - 19:00 日・月・祝日休廊
レセプション: 9月13日(土)17:00-19:00
*作家が在廊して開催予定です
Yutaka Kikutake Gallery Roppongiでは、9月13日(土)から 10月18日(土)まで、新里明士と小左誠一郎による二人展を開催します。穿たれた穴と繊細な光の効果が特徴的な「光器」シリーズで高い評価を得る新里と、シンプルな色面構成によって近年ますます表現の深度を広げる小左誠一郎。陶磁と絵画という異なる領域を横断し、「色」という共通のテーマを巡る新作の制作を通じて、互いに影響を与え合う共振的な空間展示に挑みます。
磁器と光の関係性を追求してきた新里は、工芸とより自由な形態の探求との間を行き来しつつ、その実践に深みを与えてきました。焼成過程に不可避のやぶれや傷をあえて取り込む試みや、天井から作品を吊るす展示形式の導入、あるいは「光器」シリーズにおける非常に繊細な穿孔作業など、洗練さと不完全さの均衡を模索するその審美的態度は、新里の作品に独特な魅力を付与しています。本展において、作家は釉薬や素材の調整によって創出した色を基礎にコンポジションを形成する新しい試みに挑みます。また本展に際し、新里と小左との間でもたれた会話の中で、二十世紀に活躍したイタリアの画家モランディについての言及も見られました。陶磁というメディウムを用いて「静物画」を構想するという新里の新境地となる本作は、伝統的な陶磁の世界を原点としながら、現代的で型に囚われない表現の可能性を志向するという二つの視座によってもたらされています。また、本展のために制作された数点の新作が同時に展示されます。
一方、画家の小左も同じく色面による抽象表現を追求してきた作家です。展示されるのは「殺風景」と題され、それぞれ朝・昼・夜と副題のある三点の絵画です。作家は分割したキャンバスの面をマスキングテープで囲み、枠内に絵具を塗るという定型化された行為の積み重ねによって絵画を制作しています。何度も貼って剥がすことを繰り返し粘着の弱くなったテープのゆるみが、絵具の恣意的な滲みやはみ出しをもたらし、画面の幾何学的構成に微細な動きを与えています。小左も同じくモランディの描く作品に絵画的な親近感を抱いてきたといいます。規則性を基盤とした画家の実践において、そのキャンバス上に立ち現れる恣意性と偶然性の連帯は、モランディの静物的世界に対する敬意とも無関係ではありません。朝、昼、夜といった時間帯に基づく光の表現はまた、新里が「光器」シリーズで追求して来たテーマでもあります。新里のコンポジションと、一日の時間を色面で表現する小左の三つの作品は、色と光というキーワードで響き合い、呼応しています。
本展において初めてのコラボレーションを企む新里明士と小左誠一郎。陶磁と絵画という一見して異なる二つの領域の交差は、互いの思わぬ共通項と考察に光を当てます。異質なメディウムの上に展開する色と光の構成は、静謐な躍動感を帯びながら展示空間に響き合うかのようです。新たな試みを重ね、表現の深度へと挑み続ける二人の作家の競演に、ぜひご注目ください。