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六本木
2025年11月1日(土) – 12月13日(土)
12:00 - 19:00
12:00 - 19:00 日・月・祝日休廊
* Art Week Tokyo 期間中は、11月5日(水)〜 9日(日)の10:00〜18:00で特別営業いたします
レセプション: 11月1日(土)17:00-19:00
*作家が在廊して開催予定です
Yutaka Kikutake Gallery Roppongiでは、11月1日より12月13日まで、三瓶玲奈(1992年愛知県生まれ、現在関東・中部地方を拠点に活動)による個展を開催いたします。知覚とイメージの問題を、線や色、光といった要素を通じて探究してきた三瓶は、本展において「抽象」という新たな視座をめぐる実践を展開します。Between Dimensionsというタイトルには、三次元空間から絵画領域である二次元への移行、さらにはその過程において明らかとなる現象の本質や差異を、抽象という形式を介して構造化することへの作家の問題意識が現れています。新作を中心とする本展の作品群は、重力、光、そして距離感といった新たな主題を軸に描かれました。また、本展における三瓶の取り組みは、二十世紀初頭のバウハウスをはじめとする前衛的表現を起点とし、様々な発展を経て現代へと至る「抽象絵画」について、歴史的観点を含む地平から自身の絵画を問い直す試みでもあります。
2022年から現在まで三瓶が取り組む「瓦解の構成」(2022年‐)シリーズは、自身のアトリエで被った地震の体験から、画布の中の描かれたイメージと現実空間とのずれを最初に認識し、構成するきっかけとなった作品です。キュビスム的な視点を均衡しつつ、形と色の造形的な関係性を軸に、下に落ちる、あるいは上に上がるという「重力」を感覚することを意図した本作は、具体的なモチーフに拠らず、現象から要素を抽出し再構成するという、本展を通じた三瓶の試みを端的に物語っています。画面を九分割し、単純なストロークで表現された矩形が並べられた「反転と均衡」(2025年)は、色と構成を用いて重力を知覚する実践です。三瓶はまた、制作において繰り返し同じ主題を取り扱い、取り組みを重ねています。たとえばそれは、「線」あるいは「光」の課題- 「線の像を結ぶ」(2019年‐)や、「光の距離」(2017年‐)に見られるように、風景に浮かぶ不可視の線の考察、あるいは遠近感や、光によって変化する色彩の構造的解釈への関心は、三瓶の絵画制作における主要なテーマであり続けています。本展に際し、抽象を考察するという新たな表現軸を抱いたことで、自身が選ぶ絵具の色、あるいは用いる絵筆にも、これまでにはない変化が見られたと三瓶は言います。身の周りの事象や、手の平サイズの実験的な構造体の観察をベースとする、極めて現象学的な絵画制作を重ねて来た三瓶は、画面上に展開する現象の解釈と再構成を、抽象という形式を介したより純度の高い造形言語へと変換し、昇華しようとしています。
三次元空間が平面になるとき、そこでは何が起こっているのか ― キャリアの初期の頃より抱き続けているという作家の問題意識は、次元間を翻訳するという観点を得て、よりシャープに研ぎ澄まされた新作群の実践として結実しました。同時に本展では、「抽象絵画」とは何か、という歴史的視点を含む大きな問いにも、彼女なりの応答を試みています。デジタル技術の発展が著しい現代社会で絵画に向き合い続けることはまた、筆の運びや、ストロークの強弱など、表現のフィジカルな側面にも少なからぬ変化をもたらしました。新たな視覚の可能性を探究した、様々な取り組みの成果がここに開示されます。新境地へと踏み出した三瓶の思考の軌跡と、その絵画実践の結晶をぜひご高覧ください。